設計図フレーム寸法割り出し計画に大凡の目処がついたところで、ぼつぼつと製作に取りかかる。
まずは、カー側フレームの寸法を割り出し、設計図を引くところから始めなければならない。今回、船はHONDAリード90+サイドカーから流用するので、船の床板を寸法割り出しの基準に使う。ただし、オリジナルの船の床板は、錆びたペラペラの鉄板で、お世辞にも再使用できるような状態ではない(というより危険!)。
そこで、厚さ4.5ミリの波板鉄板を用意して、オリジナルの床板から寸法を写し、サクッと切り出した。これに船を仮置きして、フレームパイプと同サイズの木材を敷く。次に、カンチレバー(Cantilever)とコイルオーバーユニットを配置して、全体の大まかなバランスを見てみる。各部の寸法は、ほぼ予想通りの数値に収まりそうだ。しかし、リードの値が若干大きい。
リードは、本車のホイールベース(軸間距離)の13〜15パーセント程度と言われる。ピットバイク(FY125EY-5サムライミニ)のホイールベースは1070mmである。リードをホイールベースの14パーセント相当とすれば、150mmが設定値になる。しかし、リードが150mmになると、船が本車よりも幾分後ろに突き出す格好になってしまう。あまり格好の良いものでもないし、なによりサイドカー重心が後半部に寄り過ぎてしまうと、操縦安定性にも悪影響を与えかねない。
リードの値が大きくなると、直進安定性が増して速度限界値は上がるが、スロットルのオン・オフ時の挙動変化が大きくなる。さらに、ハンドル操作が全体的に重くなるとされ、進路変更の際は、本車側に曲がりにくくなる。加えて、パッセンジャー乗車時にシミー現象も発生しやすくなる。逆にリードの値が小さくなると、カー側には曲がりやすくなるが、いわば前輪が一つ欠けた4輪車の状態に近づいて行くので、車体前部の挙動が不安定になりやすい。
あれこれ試行錯誤しながら、結局リード値は175mmniに落ち着いた。仮に、不具合が出たとしても、アライメント調整が可能なように、わざわざ両持ちのカンチレバー方式を採用した。調整範囲内であれば、後々対処も可能であろうから、四の五の難しく考えず、サクッと決めることにした。
リードの値が決まれば、自ずからスイングアームのピボット位置も決まってくる。スイングアームのピボットを支える位置には、横方向のフレームパイプが来るので、このパイプを基準に他のフレームパイプの位置を割り出す。
今回製作するカー側フレームは、横方向に50mm×25mm角のスチールパイプを使う。縦方向は38mm径のスチール丸パイプを2本使い、角パイプを貫通して井型(ラダー・フレーム)に組む予定である。井型とはいうものの、スイングアームのピボットは、スチール角パイプを前後2本連結して支えるようにするので、横方向のパイプは実質3本になる。
フレーム寸法の割り出しのために、まずは船と本車の下に8mm合板を敷いておく。次に、合板に幅1,300mmの平行線を引き、この範囲内に本車と船を並べて仮置きする。続いて、船の下に縦横それぞれのスチールパイプを仮置きし、各部の寸法を合板にマークして行く。各部のバランスを見ながら、この段階で本車と船の連結箇所を決定しておく。大排気量車に比べると、本車のホイールベースが極端に短いため、下手をすると、足と前後の連結調整ステーがぶつかってしまう。
前後の連結調整ステーは、上から覗き込んだとき、本車から船に向かって、三角形を描くように配置することが望ましい。ステー自体の剛性は変わらずとも、ステーとフレームとが三角形を作ることによって、ステーが平行に配置されたときよりも、連結部の剛性を上げることができるからである。足の自由度を確保しながら、適切な位置で必要十分な剛性が確保できるよう、慎重にロッド・エンド・ジョイントの設置場所を検討する。
他にも、ハンドルをいっぱいに切ったとき、ハンドルと船が干渉しないか、足下のチェンジペダルの操作に支障はないか、本車と船との間隔は適切か、ブレーキホースやケーブル類の取り回しをどうするかなど、予測できるすべての問題について検討しておく。ここで急くと、後で取り返しのつかない失敗につながりかねない。焦る気持ちをぐっとこらえて、じっくりと検討作業に取り組む。
大方、問題の洗い出しと解決方法に目処が立ったところで、下に敷いた合板に本車前後輪の軸位置や船の底板の位置、フレームパイプの位置や側車輪の軸位置、フレームパイプの長さやロッド・エンド・ジョイントの取り付け箇所、その他各部の寸法等を書き込んで行く。すべての書き込みが終了すれば、合板に1/1の設計図が出来上がる。その後、設計図は記録のため、縮尺10分の1で、設計用紙に引き写しておく(未だに書けていないが……)。
設計図が出来上がれば、ここからは切った貼ったの楽しい金属工作の始まりである。
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